深海航行記

海流の行き着く先

ビールストリートの恋人たち 静寂と美、隠された怒り

オリジナル・サウンドトラック『ビール・ストリートの恋人たち』アーティスト: ニコラス・ブリテル,Nicholas Britell出版社/メーカー: ランブリング・レコーズ発売日: 2019/02/20メディア: CDこの商品を含むブログを見る 美しく鮮やかに切り取られた映像。抑…

PSYCHO-PASS SS Case.2 First Guardian システムのなかの政治のあらわれ

劇場に観に行くつもりはあんまりなかったが、征陸役の有本欽隆さんが亡くなられたと聞き、追悼の気持ちで劇場に足を運んだ。 だが、作品としても劇場に観に行ったことは正解だった。 本作は、psycho-passのファンへの優れたサービスであると同時に、作品世界…

平野啓一郎『マチネの終わりに』「運命」に呑まれる「自由」

ずっと読みたいと思いつつ、読めずにいた平野啓一郎作品。とても好みだった。著者の自由への関心の高さが伝わってくる小説。恋愛小説というよりかは、自由の物語のように僕には感じられた。広くおすすめしたい。 今年の秋には福山雅治さんと石山ゆり子さんで…

谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』溶け合う「日常」と「非日常」

レーベルを角川文庫に移した『ハルヒ』。僕は常々ハルヒの岩波文庫入りを願ってきているのだが、その未来は確実に一歩近づいたようだ。 ラノベ作品には見えない、とネットで話題になった表紙と、筒井康隆解説に釣られて思わず購入。感想というか、ほとんど懐…

『Fate Stay Night Heaven's Feel Ⅱ lost butterfly』感想 実像としてのふたつの内面

Fate Stay Night Heaven's Feel Ⅱ Lost butterfly(以下、HFⅡ) を見てきた。最高。感想を書く。 黒い影に侵されゆく世界。士郎が願った「正義」の行方とは。 緻密な背景描写と、不穏さと緊迫感を孕んだサウンド。そして、それらに支えられた圧巻の戦闘シー…

『リズと青い鳥』感想・考察 少女たちは遠き空へと羽ばたく

はじめに 「えもいーー!」が最近の口癖。世のえも成分を余さず摂取していきたいと思う今日この頃。 えもいと言えば昨年公開の『リズと青い鳥』。『リズと青い鳥』といえばえもい。というわけで、山田尚子監督作品、『リズと青い鳥』のBlu-rayを購入ました。…

踏切板からの眺め

出会った踏切の名前をメモ帳に書き込んでいた時期がある。だいたい小学校3年生くらいだったろうか。肌身離さず手帳を持ち歩き、踏切の名前を蒐集していた。旅行かなにかで、たまに車で遠出するのが大きな楽しみだった。なぜなら、未知の踏切の名前に出会える…

逆流とコーヒーブレイク

コーヒーを飲み終える。匂いたつ上品な香りと、ほのかに残る爽やかな後味。それらとともに私に訪れたものがある。 そう。胸やけである。 胸の奥からこみ上げてくる苦みと酸味。端的に言えば、気持ちが悪い。机に常備してある太田胃散に手を伸ばす。いつのこ…